ご主人を戦争で亡くし、今までずっと一人暮らしを続けてこられたTさん。東京に住む甥子さんに靖国神社に参拝に行くように勧められていましたが、ご自身の体力的なこともあり、ずっとためらわれていました。しかし、勇気を出してケアマネジャーさんを通して私どもに連絡をくださり、とうとう靖国参拝が実現することになりました。
荘厳な雰囲気が漂う靖国神社で遺族として初めての参拝を済ませ、「なんだか気が晴れたわ」とTさん。お食事中も終始おだやかな表情で甥子さんと思い出話に花を咲かせていました。
そして、戦争の資料などが集められた遊就館へ。かつて日本がかかわってきた戦争の資料が展示されている2階をまわった後、1階へ下りていきました。そこには戦争で亡くなった方々の写真や遺品が数多く並んでいました。
歩き出してまもなく、突然、館内にTさんの嗚咽が静かに響きました。Tさんの目線の先には、一枚の写真。戻ってこなかったご主人のものでした。
しばらくして、遊就館を出たTさんはとても晴れやかな笑顔を見せ、「久しぶりに会えて、本当によかった。ありがとう」と言ってくださいました。そして、新幹線に乗って帰る頃には、いつも通りのTさんに戻っていました。