現在102歳のU様は、数十年前から娘様と神戸に住んでいました。元気な頃は、旅行が好きで、色々な所へ行かれていましたが、だんだんと行くこともなくなっていました。
しかし、最近、何度も、娘様に生まれ育った浜松のことを話されて「浜松に行きたい」と言われていたそうです。娘様も訪れたことの無い場所でした。
娘様は、U様がご高齢のこともあり、万全を期するために「しゃらく」に旅のコーディネイトを依頼してくださいました。
思いのキーワードは2つ。「宿蘆寺と鴨居の観音様」。
出発第1日目。まずは、「宿蘆寺」のある浜名湖の舘山寺。U様にとって、久しぶりの遠出でしたので、介護タクシーでの道中、2時間から3時間置きに休憩。車窓から景色を楽しんでいただきながら、半日かけてゆっくりと舘山寺温泉まで行きました。
夜は、久しぶりに旅館の温泉に入浴され、広い湯船に足をのばされながら、「気持ちいい、明日は宿蘆寺に行くのだね」と、ゆっくり浸かり、旅の疲れを癒しました。
第2日目、9時前に旅館を出発し、さっそく「宿蘆寺」を訪れました。前日にスタッフが下見に行き、探していましたので、迷うことなく、U様を案内することができました。
小高い山に寺はあり、U様のご両親とご先祖が眠られるお墓は、他のお墓から少し離れた草深く木々が生い茂る中にありました。久しく訪れる方も無かったのか、荒れ果てていました。坂道で足場が悪かったため、U様はお墓の前までは行けません。
娘様とスタッフが、草をかき分けむしりながら、何とか近くまで行き、お墓を整え、供花しました。
「もっと近くに行ってくれるかな」とU様。スタッフができるだけお墓の近くに車椅子をつけると、群がる蚊を気にもせず、手を合わせ、拝んでおられました。
次は、「鴨居の観音様」。浜松市へ向かいました。途中、浜名湖を横断し、すっかり変わってしまった浜松の様子に、「変わったね」。
鴨居の観音様に到着すると、記憶は鮮明に蘇えり、車椅子を押すスタッフに「ちょっと、あっちに行ってもらえるかな」と、どんどん指示。「ここに、坂があって、向こうが門で…」途絶えることなく記憶が湧きだされたご様子。「この坂から上がって、池があって…」境内で遊んだ日の事を昨日の事のように話しておられました。
久しぶりの浜松での思いを胸に、神戸へ向かいました。私達もご一緒させていただき、1泊2日の旅でしたが、80年前へタイムスリップしたかのような楽しい旅となりました。
また、行かれることがありましたら、ご一緒させてください。