今回は、50代のお客様Oさんと1日旅行に行ってきました。
(知的障害(重度)、視覚障害、夜妄症、チック症、癲癇)
Oさんはここ10年ほど、旅行や外出とは縁のない生活をしていました。大好きな「うなぎ」を食べたい、そしてテレビでしか見たことがない新幹線に乗りたいというOさんのご要望にお応えすべく、阪神方面から介護タクシーで姫路にむかい、姫路駅付近で「うなぎ」を食べて、新幹線で新神戸駅まで帰ってくるという無理のない行程でお出かけに行ってまいりました。
日帰りプランで5時間前後。あらゆる事態に対応できるよう、床に引くシート、膝掛け、ウェットティッシュに箱ティッシュ、スプーン、着替え、保険書、薬などを用意すると私のリュックサックはいっぱいです。
行きの介護タクシーの中、久しぶりの外出のためか会話が弾みます。昔、父親と行った阪急百貨店。そこでよく食べた、シロップをたっぷり塗ったホットケーキ。そして必ず飲んだミックスジュース。気持ちが高ぶっているのが伝わってきます。
Oさんの歩くスピードは非常にゆったりとしているため、人が多い姫路駅前は危険がいっぱいです。
何気なく歩く道でも、前からくる自転車が、ダンプカーが突っ込んでくるように感じるほど。
普段なら気にならない5cm程度の段差も、Oさんには大きな壁に感じてしまいます。小さな石でも、簡単に転倒してしまう。少しでも肩が当たれば、転倒してしまう。
たった100mもない道のりを約30分近くかけてやっと昼食のお店に到着。食べたかった「うな重」を注文しました。
「昔は大盛り2杯は食べれた」と自慢げに話しながら、Oさんの口からは、昭和60年の阪神タイガース優勝の話題が。「バースがいたよね」「岡田監督が現役だったよね」大のつくタイガースファンのOさん。
うな重が来るともくもくと食べ始め、となりに座る私にふいに一言、
「おいしいですな。」
私は目頭が熱くなってしまいました。
その後、新幹線に乗るために、姫路駅へ。人の多さだけでなく、車のクラクションの音、スピーカーの音などに少しパニックに陥っている様子。時々、立ち止まり耳を抑えたりしていました。それも仕方ありません。久しぶりの外出で、しかも普段は静かなところで生活しているのですから。常に声かけをしながら、ゆっくりと1時間かけて新幹線のホームまで行きました。
少し早く着いた姫路駅の新幹線のホーム。
何本かの新幹線が猛スピードで前を通過します。
その度にOさん、「新幹線に乗りたかったんですよ。」
その後、新幹線に乗車した直後の「乗りましたねえ」というOさんの一言は、今でも私の心に強く残っています。
そして今、Oさんの歴史に一つの思い出を刻むお手伝いができて、心の底からよかったと思える自分がいます。
新神戸からの介護タクシーの中、
「次もまたウナギを食べに行こう、できれば温泉に入ったことがないから温泉に入りたい!!」とOさん。
その希望も私たちしゃらく旅倶楽部がかなえましょう!!